「八日目の蝉」のあらすじ【ネタバレ注意】

映画「八日目の蝉」はU-NEXTで見ることができます。



「八日目の蝉」のあらすじ紹介

「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」

「八日目の蝉」は、愛人の子供を誘拐した希和子と誘拐された恵理菜(薫)の約4年にわたる逃亡劇、そしてその後の生活を描いた作品です。

◎ストーリーでは、誘拐犯(希和子)の逃亡劇と、誘拐された女の子(恵理菜)の大人になったその後の物語が時間軸を前後しながら交互に描かれています。

ストーリーの流れをそのままに

~現在の〇〇~

~過去の〇〇~

の表記であらすじを書いています。

“以下はネタバレを含むあらすじ紹介記事です。ネタバレが嫌な方は見ないで下さい。”

恵理菜と希和子の出会い。

「私たちの幸せを返してください」

物語は裁判からはじまります。

答弁をするのは、誘拐された恵理菜の母親である秋山恵津子。(以下、恵津子)

その言葉には、犯人への怒り、苦しみ、悲しみに満ちています。

~過去の希和子~

被告人の野々宮希和子(以下、希和子)は、恵津子の旦那である秋山丈博(以下、丈博)と不倫関係にありました。

希和子は丈博の子供を身ごもった末、丈博に説得され堕胎しその手術により子供が産めない体になってしまいました。

一方で丈博と恵津子の間には女の子が産まれ、恵理菜と名づけられました。

産まれた赤ちゃんを一目見たいと考えた希和子は丈博の家へ向かい、開いていた窓から家の中に忍び込みます。

誰もいない家の中で、一人ベッドで泣いている恵理菜を見つけます。

希和子の顔を見て泣き止む恵理菜。

嬉しそうに抱っこする希和子に笑顔を見せます。

そして希和子は衝動的に恵理菜を誘拐。

ここから希和子の逃亡生活がはじまります。

~現在の希和子~

裁判の答弁で希和子は

「お腹の子を殺したことや、奥さんのいる人と結婚しようとしたことを、この子の笑顔を見て許してくれたと感じた。あの笑顔になぐさめられた様なそんな気持ちだった」

と答えます。

懲役6年を言い渡された希和子。

傍聴席では、恵津子が希和子をにらみつけています。

「最後に何か言いたいことは?」と裁判長に聞かれた希和子は

「4年間子育てをする喜びを味合わせてもらったことを、秋山夫妻には感謝しています」

と話します。

「感謝ではなく、謝罪の気持ちはないのですか?」と問われた希和子は

「お詫びの言葉もありません」

と一言。

それを聞いた恵津子は

「死んでしまえ」

と憎しみに満ちた言葉を投げつけます。

感情が抑えられない恵津子は

「死ねばいい、死ねー!」

と泣き狂いますが、それを聞いている希和子は顔色ひとつ変えません。

事件解決から17年、大人になった恵理菜。

~現在の恵理菜~

誘拐された秋山恵理菜(以下、恵理菜)は現在21歳。

誘拐され約4年間を希和子とふたりで過ごし、その後4歳で無事保護されます。

両親の元へと帰った恵理菜でしたが、両親との関係をうまく築くことができませんでした。

実の両親のもとにもどっても「ふつう」の生活は望めず、心を閉ざしたまま恵理菜は成長します。

現在は親元からはなれ、大学へ通いながら一人暮らしをしています。

アルバイト先の居酒屋で、皿洗いなどもくもくと仕事をこなす恵理菜。

バイト仲間にカラオケに誘われますが、恵理菜は断ります。

アルバイトが終わり外に出た恵理菜に、フリーライターの安藤千草(以下、千草)が近付きます。

千草は、過去の誘拐事件の話が聞きたいと恵理菜に伝えます。

「覚えていません」と冷静に対応する恵理菜。

「なにか思い出したら話を聞かせて、また来るから」

と、ファイルを手渡し千草はその場を立ち去ります。

自宅へもどり携帯を手にする恵理菜。

携帯には付き合っている相手「岸田」からのメールが。

恵理菜は現在、父親の丈博や希和子と同じく既婚者と不倫をしていたのです。

関係を断ちたい恵理菜は、岸田と同じ職場である塾のバイトをやめ、岸田のことを避けていました。

ふと千草から渡されたファイルが気になり見てみると、誘拐事件の事が書かれている新聞記事や雑誌の切り抜きがきれいにファイリングしてありました。

ファイルを見て過去を思い出し、ため息をつく恵理菜。

後日、バイト先の居酒屋に岸田が飲みに来て、恵理菜のバイトが終わるのを待っていました。

同じく千草も外で待っており、恵理菜は岸田をことわり千草と歩き出します。

岸田は悲しそうに恵理菜の背中を見送ります。

二人は歩きながら、ふと、鳴いているセミの話に。

「セミって何年も土の中にいるのにさ、地上に出てきて三日で死んじゃうんだって。悲しいよね。」

という千草。

「三日じゃないです。七日です。」と恵理菜は答えます。

他愛のない会話をしながら、ちょっと座って飲もうとベンチに座る二人。

「私ね、今度あなたのこと書きたいの。あの誘拐事件のこと書きたいんだ」と早口で伝えます。

「本当に覚えてないんです」と伝える恵理菜。

恵理菜と仲良くなりたい千草は、これから恵理菜の自宅で飲もうよと話します。

恵理菜は千草の押しに負け、自宅で二人で飲むことに。

朝、恵理菜が目を覚ますと冷蔵庫をあさる千草が目にはいります。

ずうずうしくも、飾らない千草に笑ってしまう恵理菜。

恵理菜は少しずつ笑顔を見せ、千草に心をゆるしていきます。

以前、恵理菜に手渡していたファイルを手に取った千草は「ファイル見てどうだった?」と聞きます。

本とか記事はどこまで本当かわからない、話ができすぎていると冷静に答える恵理菜。

「無事に戻ってこられて良かったね」という千草に

「正直、今でもあまり家族って感じがしません。本当の母親が誰かって分かるまで時間がかかったし。母親も困ってたんじゃないかな、私がそばにいると事件の事思い出すみたいで。」

と恵理菜。それを聞き

「困るってなんで?あんたは何もわるくないじゃん。」

と千草。

それを聞いてハッとする恵理菜。

千草の言葉で救われたような気がしました。

ここから恵理菜は、思い出したくない過去と向き合いはじめます。

~過去の希和子~

子供を身ごもった希和子は、丈博に子供の名前は男でも女でも「薫(かおる)」とつけたいと話します。

妊娠したことに喜ぶ希和子でしたが、丈博は困ると伝えます。

「いつかちゃんとするから」とかわす丈博に説得され、子供を堕胎してしまいます。

同じ頃に妊娠していた、本妻の恵津子。

愛人である希和子の存在を知っていました。 恵津子は希和子の自宅をたずね、自分の大きくなったお腹をさわらせ希和子が子供を堕胎したことを責めます。

「あんたなんか、からっぽのがらんどうなの」

とひどく罵ります。

この経緯から希和子は誘拐した「恵理菜」のことを、自分が名づけたかった「薫」と呼ぶことにします。(以下、薫(恵理菜))

希和子は薫(恵理菜)を誘拐したあと、友人宅へと駆け込みます。

その時、子供の父親が子供に手をあげるから逃げてきたとウソをつきます。

ニュースでは薫(恵理菜)が誘拐された事件が報道される様になり、希和子は誘拐犯として全国に指名手配されていました。

ニュースを見て焦った希和子は、ハサミで自分の髪を切り見た目を変えて逃亡します。

大事に薫(恵理菜)を抱えて電車に乗る希和子。

ホテルへとたどり着きます。

泣きじゃくる薫(恵理菜)、焦ってミルクを用意する希和子。

抱っこしても泣き止まず、ミルクを飲もうとしない薫(恵理菜)を悲しそうに見つめます。

何をしても泣き止まない薫(恵理菜)を抱っこし、希和子も一緒に泣いてしまいます。

後日、行き場のない希和子は外のベンチに座っていました。

そこで「赤ちゃん何か月?」と、エンジェルホームの自然食品販売に来ていたエステル(久美)に話しかけられます。

エステル(久美)から手渡されたチラシには「エンジェルホーム」の案内が。

行くところのない希和子は、駆け込み寺の様な存在の宗教施設「エンジェルホーム」へ行くことにします。

~現在の恵理菜~

恵理菜の父親である丈博は、母親の恵津子に内緒で一人暮らしをしている恵理菜にお金を渡していました。

娘を心配する丈博ですが、恵理菜は本当に大丈夫とお金を受け取りません。

「お母さん、元気?」と聞く恵理菜に、「やっと恵理菜がいないのに慣れてきた。たまには電話してやれ」という丈博。

「お父さん、無理して親ぶらなくていいよ。そういうの全然似合ってない」と恵理菜は笑います。

そうかと笑う丈博でしたが、二人には微妙な空気がながれます。

重い空気の中、丈博はじゃあなと言い立ち去ります。

~過去の恵理菜~

無事保護された恵理菜は、本当の両親の元で暮らしはじめますが幼い恵理菜には状況がつかめません。

自分の記憶の中の母親は、一緒に過ごしてきた希和子だからです。

知らないおじさんとおばさんにつかまっている、そこから逃げてきたと

交番に駆け込む恵理菜。

自分の名前も「恵理菜」ではなく「薫」と警官に伝えていました。

迎えに来た本当の母親である恵津子は、こんなに心配させてとヒステリックに恵理菜を責めます。

いまだ自分のことを「薫」という恵理菜にもとまどいイライラを隠せない恵津子。

恵理菜を責めるとともに、どこにも行かないでと訴えます。

恵津子自身も、恵理菜との親子関係をうまく築くことができないことに悩んでいました。

帰宅し、恵理菜に絵本を読み聞かす恵津子。

「お星の歌を歌って」

という恵理菜のリクエストに答え、きらきら星を歌い始めますが

それは恵理菜の歌ってほしい歌ではありませんでした。

恵理菜は希和子が歌ってくれた「お星の歌」が聞きたかったのです。

恵津子はイライラを恵理菜にぶつけます。

もともとヒステリックな一面のあった恵津子の精神状態はおかしくなっていました。

「お母さん、ごめんなさい。お母さん、ごめんなさい。」

と恵理菜は繰り返しあやまります。

~現在の恵理菜~

自宅にいる恵理菜の元に、押しかけるように岸田が訪ねてきます。

会いたかったんだと伝える岸田。

二人は体を重ねます。

以前は岸田と同じ塾で働いていた恵理菜ですが、既婚者の岸田のことを忘れるために辞めていました。

「私よくわからないんだ。好きになるってどういうこと?好きでいるのやめるってどういうこと?」

と岸田に問います。

「やめなくたっていいんだよ。えりちゃんとのこと、そのうちちゃんとするから」

という岸田。

恵理菜は不倫を辞められずにいました。

~過去の希和子~

エンジェルホームの販売車に乗り込み、エンジェルホームへと着いた希和子と薫(恵理菜)。

案内されエンジェルホームの代表「エンゼル」の元へ。

独特な雰囲気を放つエンゼルは、ここは天使の家だということを話します。

「なにもいりません。ただこの子と生きていきたいんです。私にはこの子が全てです。どうか助けて下さい。」

と希和子は必死に訴えます。

エンジェルホームは女性だけの施設で、さまざまはワケありの人たちが身を寄せ合っていました。

社会との交流はなく、家族に会うこともありません。

カイン・アンナ・エバなどと名前がつけられ、農作業、販売、染布、給食、掃除洗濯と役割分担されそれぞれ働いていました。

希和子と薫(恵理菜)はホームに受け入れられ、おだやかな日々を過ごします。

エンジェルホームへ来るきっかけとなったエステル(久美)とも仲良くなり、子供を旦那にとられた悲しい過去があることを聞きます。

エンジェルホームでの生活に慣れてきたころ、希和子と薫(恵理菜)はエンゼルから名前をもらいます。

希和子は「ルツ」、薫(恵理菜)は「リベカ」と名づけられました。

恵理菜の「出会い」と「別れ」。

~現在の恵理菜~

フリーライターの千草は恵理菜に呼ばれ、恵理菜の通う大学へと足を運んでいました。

そこで恵理菜から相談をされます。

「子供ができたかもしれないんだけど、こういうのって普通だれに相談するんですか?親以外で。」と。

恵理菜は落ち着いた様子で淡々と話します。

場所を変えた二人は公園で飲みはじめました。

公園では、セミが鳴いています。

「7日で死んじゃうなんてあんまりだよね。」と千草。

「他のどのセミも7日で死んじゃうんだったら別にさみしくない。だってみんな同じだし。でももし8日目の蝉がいたら仲間みんな死んじゃってるのに、その方が悲しいよ。」

と恵理菜。

お酒を飲み酔っぱらっている恵理菜は、公園のトイレで妊娠検査薬をすると千草に伝えます。

千草は心配そうに恵理菜を見送ります。

後日恵理菜は、岸田と久々に食事へ。

乾杯をしてから

「もし私に子供ができたらどうする?産んでって言う?それともおろしてって言う?」と聞きます。

岸田は「そりゃもちろん産んでほしいけど、今すぐっていうのは現実的にむずかしいと思う。」と話します。

恵理菜と暮らしたい、そのうちちゃんとするって何度も言ったでしょと続ける岸田。

フフっと笑い、言ってることがうちのお父さんみたいと言う恵理菜。

岸田を切なそうに見つめます。

そして、「ふつう」じゃない家で育ったから、誕生日もクリスマスも花火大会も花見も全部岸田とはじめてしたこと、いろいろなことを教えてくれたことの感謝を伝えます。

「じゃあ今度はどこ行く?」という岸田に

「もう会わないよ」

と伝える恵理菜。

「今までありがとう」と頭を下げ、今までの感謝を伝えます。

その目には涙があふれていました。

後日、恵理菜はクリニックへ。

恵理菜はやはり、岸田の子を妊娠していました。

病院で検査をうけた恵理菜は、子供を産み育てる決心をします。

その夜、恵理菜の自宅にきている千草に子供のことを伝えます。

どうやって育てるの?岸田には言ったの?と心配する千草。

心配してくれる千草に、なんで私に親切にしてくれるのかと恵理菜は聞きます。

「今いるところから出ていきたいの。一緒なら出ていける気がする」

と千草は話します。

そして今まで恵理菜に伏せていましたが、千草自身もエンジェルホームにいた事実を恵理菜に話します。

おどろく恵理菜。

実は、エンジェルホームでは姉妹のように育っていた恵理菜と千草。

千草はエンジェルホームで「マロン」と呼ばれていました。

すでに二人は幼少期に出会っていたのです。

後日、久しぶりに実家に帰る恵理菜。

両親そろって自宅におり、恵津子は落ち着いた様子です。

恵理菜は、学校をやめようと思っていること、子供ができたことを伝えお金を貸してほしいと話をします。

子供の父親は「お父さんみたいなんだよ」と、不倫の末にできた子供である事も伝えました。

恵理菜の話を聞き、おろしなさい、今すぐ病院へと怒る恵津子。

「おろすなんて信じられない。あんたは空っぽのがらんどう」だと希和子に言ったでしょと恵理菜は伝えます。

恵津子は「全部、あの女の被害妄想だ」と反論しますが、恵津子が希和子に言ったのは事実でした。

恵理菜は

「私産むよ。人の子供を誘拐したりしないで済むように一人で産む。」

とまっすぐに母を見つめます。

話を聞き落胆する恵津子は

「なんで忘れないの?」

と感情的になり包丁を手にします。

恵津子は、恵理菜の記憶の中にいる希和子が許せないのです。

「どうしてあの女の言う事を信じるの?」

恵理菜は冷静に聞いています。

「私だってちゃんと普通の母親になりたかったのよ。」

恵理菜の足元に泣き崩れます。

「お母さん、ごめんなさい。でもね、あたしからっぽになんかなりたくない」

と母を見下ろす恵理菜。

「どうすれば良いの。恵理菜に好かれたいの」

と言う恵津子の手を握り、恵理菜は身を寄せつつもとまどった顔を見せます。

~現在の恵理菜~

千草の車に乗り、二人はエンジェルホームへと向かいます。

幼少期を過ごしたエンジェルホームは、今は廃墟となっていました。

千草は自身の知っている情報を恵理菜に伝えます。

ホームの代表のエンゼルたちは、希和子が誘拐犯だと知りながらもかくまっていたこと、エンジェルホームはカルトだと叩かれ代表のエンゼルが亡くなった後に幹部の一人が大金を持ち出し、ホームはなくなったことなど。

「この壁をみると、いまでも緊張してむかつくんだよね。」

千草にとって、エンジェルホームでの思い出は良いものではありませんでした。

~過去の希和子~

エンジェルホームでの生活に慣れてきた希和子と薫(恵理菜)。

そのころ、入居者を心配する親族などがエンジェルホームに押しかけ、抗議をすることが多くなってきました。

エンジェルホームはカルト団体だと言われはじめ、世間の目が厳しくなってきた為です。

世間への発覚をおそれた希和子はホームを出る決心をします。

出たくないとグズる薫(恵理菜)をなんとか説得します。

希和子たちがエンジェルホームを出ていくと気付いたエステル(久美)は、希和子に小さなバッグを手渡し涙ながらに見送ります。

無事、ホームの外へと出た希和子と薫(恵理菜)。

エンジェルホームの敷地の中からは、マロン(千草)が悲し気に二人を見ていました。

外へ出てから森をさまよう二人。 暗闇が続き、怖いねとつぶやく薫(恵理菜)に、ママがいるから怖いことなんてないと希和子は勇気づけます。

そこで希和子はお星の歌を歌ってあげると言い、

「見上げてごらん夜の星を」

を薫(恵理菜)に歌い聞かせます。

~現在の恵理菜~

エンジェルホームを後にした二人は、今夜泊まるホテルへ。

恵理菜は千草から、希和子は刑期を終えてすでに出所していることを聞きます。

希和子の居場所を知っているのではないか、本当は事件を面白がっているのではないかと不審がる恵理菜は千草を責めます。

本当は誰かに聞いてほしかった、全部話したかった、子育てなんてできるわけない、母親になんかなれないと、恵理菜は不安な胸の内を千草に泣きながら訴えます。

「記事に面白おかしく書くんでしょ?だって知らないもん、可愛がって叱って、どんな風に仲良くなるのか分からない」

と。

それを聞いた千草は、何も書かない、心配なら一緒に母親やるからと恵理菜に思いを伝えます。

千草自身、エンジェルホームで育った自分を嫌がっており、どうして普通に育ててくれなかったんだと感じていました。

二人で母親になりたいと、恵理菜のお腹をなでて抱きしめます。

二人の絆は、固くなっていました。

翌日二人は、希和子と薫(恵理菜)が過ごした「小豆島」へとフェリーで向かいます。

希和子と過ごした小豆島へ。

~過去の希和子~

エンジェルホームを出る直前にエステル(久美)に渡された小さなバッグの中には、1万円とメモが入っていました。

メモには香川のそうめん屋の住所と、”もし行くようなことがあったら私は元気だって伝えて”と書かれています。

このメモに書かれてあるそうめん屋の住所は、久美の実家でした。

そして希和子と薫(恵理菜)は、フェリーに乗って久美の実家のある香川県の小豆島へと向かいます。

到着した小豆島は美しい海と、大自然、田園風景が広がるきれいな場所でした。

久美の実家であるそうめん屋へ到着し、久美の母親、昌江と出会います。

希和子は久美の知り合いであることを伝え、ここで働かせてくれないかとお願いします。

一旦は断られてしまった希和子でしたが、行くところがないのかと心配した昌江から、今夜家に泊って久美の話を聞かせてほしいと伝えられます。

そこから仲良くなり、希和子はその後そうめん屋で働くことになりました。

そうめん屋で働きながら、沢田家の離れに住まわせてもらうことになった希和子と薫(恵理菜)。

小豆島では「宮田 京子(希和子)・宮田 薫(恵理菜)」の偽名を使っていました。

希和子はこの島で働きお金を稼ぎ、薫(恵理菜)にエンジェルホームでは見せられなかったきれいな景色やさまざまな風景を見せると心に決めます。

そして一日でも長く、薫(恵理菜)と居たいと心から祈り仕事に励みます。

希和子と薫(恵理菜)は、新しい土地で本当の親子のように楽しく暮らしていました。

~現在の恵理菜~

小豆島へ着いた二人。

広場の芝生の上でくつろいでいます。

病院へ行く前までは、本当は子供をおろそうと思っていたと千草に話す恵理菜。

しかし病院で見せられたエコー写真を見て思いなおし、お腹の子にいろいろな景色を見せる義務があると思ったと話します。

千草は以前話した「八日目の蝉」の話をします。

「七日で死ぬよりは八日目のセミの方が悲しいと思ってたけど、違うかもね。八日目の蝉はほかの蝉には見られなかった何かを見られるんだもん。もしかしたらすごく綺麗なものかもしれないよね」

と。

恵理菜は「そうかもね」と答えます。

恵理菜と千草の旅は続きます。

~過去の希和子~

すっかり島になじみ、穏やかに暮らしている二人。

昌江は、薫(恵理菜)のことを本当の孫のように可愛がっていました。

ある日、島の祭りに参加する希和子と薫(恵理菜)。

松明に火をつけ、暗い夜道を祭りの参加者たちが歩きます。

参加者やきれいな風景の写真を撮るカメラマン。

パシャパシャと撮影しています。

写真を撮られることに抵抗がある希和子は気になりましたが、それよりも緑豊かな島の中を、松明の火が彩る風景に魅了されていました。

~現在の恵理菜~

小豆島を巡っていた二人。

恵理菜は島を巡るうちに徐々に昔の記憶を思い出していきます。

そして恵理菜は、希和子と住んでいた沢田さんの自宅へとたどり着きます。

近付いてみると「売物件」の張り紙が。

家を見て、さらに昔のことを思い出します。

思い出すのは、誘拐犯である希和子からたっぷりの愛情を受け幸せに暮らしていた日々でした。

恵理菜は、希和子がいろいろなことを見せてくれていたことを改めて思い知りました。

~過去の希和子~

真面目にそうめん屋で働いている希和子。

ある日、昌江たちから呼ばれて行った先で恐れていた事態が起こっていることを知ります。

祭りの時に撮られた希和子と薫(恵理菜)の写真が、コンクールで入賞し全国紙の新聞に載っていたのです。

よろこぶ昌江たちとは裏腹に、希和子は呆然とし焦ります。

そして希和子は、小豆島を出る決心をします。

島を出る前に写真館に入り、家族写真を撮ってほしいと伝えます。

撮影のためにソファに腰掛けるふたり。

希和子は、恵理菜の頭をなでながら涙を流します。

そして、包んだ手のひらからそっと薫(恵理菜)に手渡しました。

「ママのもってるもの全部あげるから持っていって。」

希和子はあふれる涙をこらえ、笑顔で二人の家族写真を撮りました。

写真館をでたあと商店でお弁当を買い、フェリーに乗ろうといそいそと店を出ます。

そこで希和子の目に入ってきたのは、複数の刑事たちでした。

その光景を見て、希和子は薫(恵理菜)の手を握りしめ覚悟を決めます。

薫(恵理菜)に「先に船で並んでて、すぐ行くから」と伝えます。

薫(恵理菜)との逃亡生活の終わり、別れを察して涙する希和子。

行くのをためらう薫(恵理菜)に、行ってと伝えやさしく見送ります。

小さな背中を見送る希和子。

振り返る薫(恵理菜)に笑顔を見せます。

そこで刑事たちがかけ寄り希和子は確保、薫(恵理菜)は保護されます。

幼い薫(恵理菜)は状況が分からず、希和子をママと呼び続けます。

連れ去られる希和子を見て泣き叫ぶ薫(恵理菜)。

連行されていく希和子は最後に

「その子はまだごはんを食べていません。よろしくお願いします。」

と深々と頭を下げます。

その目には涙があふれていました。

希和子は最後まで、親として薫(恵理菜)を心配し愛情を向けていました。

ここで二人の逃亡生活に、終止符が打たれます。

~現在の恵理菜~

恵理菜は小豆島の港で、見覚えのある景色を思い出します。

それは、希和子が逮捕される直前、薫(恵理菜)が立っていた場所でした。

記憶がよみがえった恵理菜は、希和子と最後に家族写真を撮った写真館へと向かいます。

写真館は昔のままの姿で残っていました。

中に入り、主人に昔ここで写真を撮った事があると伝えます。

写真館の主人は顔を見せてと言い、恵理菜の顔を見つめると1枚の写真を出しました。

写真が入った封筒には「宮田 京子・薫」と書かれています。

主人は、希和子があの時の写真はあるかと5年ほど前に訪ねてきていたことを恵理菜に伝えます。

そして、希和子は何も言わずにただ写真を見ていたと主人は伝えます。

現像室に恵理菜を連れていき、ネガを現像液に浸すと昔の二人の写真が浮かび上がってきました。

それを見て涙する恵理菜。写真館を飛び出します。

「憎みたくなんかなかった。お母さんのことも、お父さんのことも。この島に戻りたかった。本当は戻りたかった。」

と泣き崩れます。

「働いて色んなもの見せてあげるんだ」

「世界で一番好きだって何度も言うよ」

恵理菜がお腹の子に誓ったその言葉は、昔希和子に言われていた言葉でした。

恵理菜は、希和子がしてくれたように自分も産まれてくる子供にたくさんの愛情をかけて育てると決心していました。

恵理菜は続けます。

「あたし、なんでだろう。この子が好きだ。まだ顔見てないのに」

「八日目の蝉」の考察

https://eiga.com/movie/55771/gallery/3/より引用

希和子と薫(恵理菜)は、小豆島を出る前に家族写真を撮影します。

そこで希和子は涙を見せ、恵理菜に「なにか」を手渡します。

ここでは希和子の涙の理由と、恵理菜に手渡したものは何だったのか考察を書いていきます。

希和子の涙の理由。

全国新聞に写真が載ってしまい、小豆島を出ようと決めた希和子。

島を出る前に写真館で家族写真を撮りますが、なぜここで涙を見せたのでしょう。

それは、一日でも長く居たいと願っていた薫(恵理菜)との日々に終わりが近付いていることを感じとったからではないでしょうか。

希和子は涙をこらえ、笑顔で撮影をします。

これまでずっと避けてきた、二人の写真を撮ることができる喜びもあったのだと思います。

のちに釈放された希和子は、ひとりで写真館をたずねています。 逮捕される前に撮影した唯一の家族写真は、本当の娘との写真として大切にしていることでしょう。

恵理菜に手渡したもの。

希和子は写真を撮る前に、涙を流しながら恵理菜になにかを手渡しました。

「ママのもってるもの全部あげるから持っていって。」

胸のあたりで手のひらを丸くつつんでそっと手渡したもの、それは希和子の「思い」でした。

薫(恵理菜)に対する想い、愛情、感謝、思い出。

自分はからっぽになってもかまわない、薫(恵理菜)に全てを託したい、底知れぬ希和子の愛情だったのだと思います。

「八日目の蝉」の登場人物

https://eiga.com/movie/55771/gallery/3/より引用

・出演者

役名:役柄

・井上真央

秋山恵理菜(薫):秋山家の長女。

生後6か月で希和子に誘拐され、逃亡生活を送ります。

希和子からは「薫」と呼ばれていました。

4歳で保護され秋山家に戻りますが、世間的に大きなニュースとなり好奇の目にさらされます。

恵理菜は心に傷を負ったまま成長し、大人になってからも周囲となじめずにいましたが、フリーライターの千草と出会うことで徐々に自分を取り戻していきます。

・永作博美

野々宮希和子:丈博の愛人。

丈博の子供、恵理菜を誘拐し全国に指名手配されますが、拠点を移しながら逃亡生活を送ります。

宗教施設「エンジェルホーム」で出会った久美の紹介で小豆島へ行きますが、小豆島での祭りの写真が新聞に掲載されたことがきっかけで逮捕されてしまいます。

・小池栄子

安藤千草:フリーライター。

幼少期、恵理菜と同じエンジェルホームで育ちます。

物語では、恵理菜を支える存在になります。

・森口瑤子

秋山恵津子:恵理菜の母親。

ヒステリックな一面をもち、愛人である希和子を激しく罵倒します。

誘拐され、戻ってきた恵理菜にどうしたら良いのか迷い、不器用な愛情を与えます。

・田中哲司

秋山丈博:恵理菜の父親。

希和子と不倫関係を持ち、子供を堕胎させます。

・市川実和子

沢田久美(エステル):夫の不倫が原因で離婚。

幼い子供をとられ絶望し、エンジェルホームへ入所します。

希和子に自身の実家の住所を教え、逃亡の手助けをします。

・劇団ひとり

岸田:恵理菜の不倫相手。

塾講師をしており、勤め先の塾でバイトしていた恵理菜と知り合います。

「八日目の蝉」の解説

https://eiga.com/movie/55771/gallery/3/より引用

蝉は地上に出てから七日間しか生きられない

それを疑いもせず生きてきた私にとって「八日目の蝉」というタイトルはインパクト大でした。

劇中で、恵理菜と千草の会話の中に「蝉」についての会話が何度か出てきます。

・千草「セミって何年も土の中にいるのにさ、地上に出てきて三日で死んじゃうんだって。悲しいよね。」

・恵理菜「三日じゃないです。七日です。」

・千草「七日で死んじゃうなんてあんまりだよね。」

・恵理菜「他のどのセミも七日で死んじゃうんだったら別にさみしくない。だってみんな同じだし。でももし八日目の蝉がいたら仲間みんな死んじゃってるのに、その方が悲しいよ。」

・千草「七日で死ぬよりは八日目のセミの方が悲しいと思ってたけど、違うかもね。八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったなにかを見られるんだもん。もしかしたらすごくキレイなものかもしれないよね」

・恵理菜「そうかもね」

◎「八日目の蝉」の解釈は人それぞれですが、ここでは考えられる2点を紹介します。

①「八日目の蝉」は希和子を指している。

八日目の蝉=仲間がいない・孤独という意味からいうと、誘拐犯の希和子を意味していると考えられます。

本来経験することのない蝉の「八日目」。

本来経験する事のない、希和子の「誘拐犯の母親」と重なります。

「他の蝉には見られなかったなにかを見られる八日目の蝉」

=「他人の子供である薫との逃亡生活で見られた景色」

を指していると捉えらえます。

②「八日目の蝉」は恵理菜を指している。

恵理菜は希和子と同じく不倫で子供を身ごもり、お腹の子を一人で育てていく決心をしますが、それは周囲に望まれている事ではありません。

たとえ望まれていなくても、忌み嫌われることであっても子供を産もうと決めた恵理菜。

「他の蝉には見られなかったなにかを見られる八日目の蝉」

=「誘拐犯の母と共に恵理菜が見てきた景色、これから産まれてくる子供が見る景色」

両方を指していると捉えられます。